多くの人が英語などの外国語ができるようになるには、単語と訳語を暗記することが必要だと考えています。しかし、私はそうは考えていません。
認知心理学から見た知識とは
まず、言語を含む知識一般を考察する。言語を使用することも技能と共通する要素を備えている。
認知心理学の専門用語では知識は以下の2種類に分けられる。
- 宣言的知識(declarative knowledge)
- 手続き的知識(procedural knowledge)
宣言的知識(declarative knowledge)
1番目の知識は、言葉などで理解していること。例えば、車の運転で言うと、右に曲がる時にはウィンカーのレバーを下げるという知識が挙げられる。言語習得論の範囲では、1は文法知識を指す。日本語を例にすると、「は」は主語と述語を繋げる機能を持つという知識などが挙げられる。
手続き的知識(procedural knowledge)
2はできる動作の知識を指す。再び、車の運転で言うと、右に曲がる時にウィンカーの機能や動作を意識することなく行うことができる意識されずに行える知識のことを手続き的知識と呼ぶ。
私たちが母語を話す時に、文法に注意をしなくても、ほとんど間違えず、且つ素早く話すことができる。言語習得で目指すべきは、文法の知識を持っているかいないかに関わらず、文法を意識することなく言語を使用できるレベルである。
生理学・脳機能学から見た自動化された動作
では、宣言的知識が手続き的知識へ自動化される過程に於いて、何が起きているのか。自動化された動作は、反復によって脳内のニューロンの結びつきが強化されることで可能になる。
自動的な動作の代表格は反射である。反射というのは、熱湯に触れると体が勝手に反応して手を引っ込めるように、脊髄を経由した自律神経に依る生得的な現象であるが、手続き的知識は後天的に習得されているが、意識的な情報処理を経ない。
言語に関しても同じで言語情報の処理をするための神経回路が構築されることで素早い理解や、発話が可能になる。
従来用いられてきた文法訳読法(grammar-translation method)は、翻訳や語順の並び替えなどを繰り返し行うことにより、外国語を翻訳する神経回路が強化されているために、翻訳癖がついているのです。英語を見ると瞬時に翻訳する癖がついていると、たくさんのインプットに触れても、なかなか自動化ができないのです。
大量のインプットが必要
ここまでは異論がない事実だろう。では、言語を2番の自動化された知識に変換させるにはどうするのか。どのようなインプットを積み上げていけば良いのか。
言語学者のクラシェン(Stephan Krashen)は理解可能なインプット(comprehensible input)により言語は習得されると仮説を建てている。私の方法でもこの理論を踏襲し、理解可能なインプット素材を選ぶこととしている。
また、脳言語学的アプローチ(neurolinguistic approach)では、自然なコミュニケーションを反復させることで行う。一部の学者の方法では、耳でのインプットや、スピーキングによるアウトプットを先に行う。この方法はカナダで既に行われている。
自然なコミュニケーションとは、言語形式を意識することなく、言語が何を意味しているのかに着目することである。言語形式というのは、平たく言うと文法などを指す。つまり、外国語を見聞きする際、文法分析を経ない言語処理を大量に繰り返すことが理想の言語習得への道ということなのである。
具体的な方法
このサイトで紹介している具体的な方法には以下のものがあります。
- 大量のインプットを処理する(たくさん読む)
- どんな分野でも使われる常用単語から覚える。→効率的な順序
- インプットの題材には、自分が関心のあるものを選ぶ。→必要な単語から
- ネット上にある無料のサイトで外国語を練習する。→無料の外国語添削サイト
- ネイティブと同じ言い回しを活用する。
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